理事長メッセージ

明星大学教授、玉川大学大学院講師、
感性・脳科学研究会会長、親学会副会長、
日本仏教教育学会理事、日本健康行動科学会理事、
親学推進協会理事長、埼玉県教育委員会委員長
時代はいま、大きな歴史的転換期を迎えている。
その規模は地球的、人類的、文明史的な広がりと深さを持っており、
人間の営みのあらゆる領域で激しい変化と予兆が起きている。
今日、私たちが直面しているのは二つの自然破壊、
すなわち環境破壊という「外なる自然破壊」と、
人間性の解体化という「内なる自然破壊」である。
両者は表裏一体の関係にあり、この二つの自然破壊の根底には、
つながり合う〈いのち〉の全体がバラバラに分断されてしまったという近代文明の問題がある。
私たちが進歩と呼び、経済発展と称してきた今日までの科学技術文明の営みが
私たちの生命を弱め、地球の〈いのち〉の活力を失わせていることを考えると、
私たち一人ひとりの内なる〈いのち〉への目覚めこそが何よりも求められているといえる。
近代化を理念とする明治の「第一の教育改革」、
民主化を理念とする戦後の「第二の教育改革」は、
欧米にモデルを求めつつ、
過去の歴史、文化、伝統などの「否定による進歩」を目指したところに限界があったといえる。
二十一世紀の「第三の教育改革」は、欧米にモデルを求めることはできない。
二十世紀は西洋文明が文明の基礎となる世界観の軌道修正をはかり、
日本文化の世界観に近づき始めた歴史的転換期といえる。
このような文明論的視点から日本文化の価値を創造的に再発見する必要がある。
グローバリゼーションの進む二十一世紀においては、
国家としてのアイデンティティを明確にしなければ、
国際社会において高い評価を受けることはできない。
一人ひとりの人間の内在価値を開発し、共同体との関わりの中で人格を陶冶し、
国際社会に貢献する日本人を育成し、
「補完的進歩」を理念とする「共創」社会の建設を目指す必要がある。
日本の教育を変革するためには、「教育界の構造改革」が必要不可欠であり、
教育者の「主体変容」すなわち、教師と親の意識改革こそが求められている。
その意味で「一人からの教育改革」こそが教育改革の出発点といえる。
教師には親に対する指導力も求められており、
保育所、幼稚園、学校を親としての学びを深める「親学の拠点」にしていく必要がある。
どんなに気高く美しい理念を謳っても、
その教育理念を体現して率先垂範していく教師のリーダーを育てなければ、
教育改革はその変革主体である教師という人の壁にぶつかってしまって挫折せざるをえない。
「師範力」とは、
師として、範を示すことのできる人間力、豊かな人間性と高い見識で教え導く力のことを言う。
師範力のある人間、例えば、
師範力の高い社会人、師範力の高い親、師範力の高い教師を目指すことにより、
結果としてあるゆる人間の利益に寄与することができるのである。
子供を取り巻く環境の変化をしっかり見据え、
脳科学や生命科学という最先端の科学の研究成果を教育に活かしながら、
戦後六十年間続いてきた教育界の不毛な政治的、イデオロギー対立を打破し、
「現場からの教育改革」の新たな潮流を巻き起こしていく先駆的な試みを
全国に発信していきたい。
相次ぐ少年の凶悪事件によって打ちのめされた教育界の夜明けは、
“一人の目覚め”が広がることによってもたらされる。
「一人からの教育改革」を志し、縦と横につながり合う“〈いのち〉への目覚め”を
日本、世界に向かって発信する教師のリーダーよ、来たれ!


